2016年2月24日水曜日

野坂昭如

朝に起こった出来事が夕方には忘れられ、物にはすぐに飽きる。食べものを汚なく食べ散らかす。何とも向き合うことなく、人間同士の付き合い方も同様。無関心のまま時間が過ぎていく。
薄っぺらでお手軽な世の中に、幾重にも正体不明の闇が広がっている。
闇は視界を妨げ、若者の心に入り込み、足をからめとる。この闇はぼくらの生き写しである。金や物を崇め、合理化とやらをすすめてきた日本。無駄だと省かれたものの中にこそ、日本の誇りがあった。風土や気質、歴史に支えられ培ってきた独自の文化。うわべ豊かとなった時、今度は内容を豊かにしなければならない。少しゆとりが出来たところで文化を深め、伝統を生かす分野に心を注ぐべきところ、抹殺することで成就しようとした。文化を壊したというよりも弊履の如く捨てた。そして日本人は醜くなった。街は便利で清潔、全体に美々しくなり、人もまた見てくれきれい。醜くなったのはその生き方、消費文化の行きつく果て。
結局、なにが豊かなのか判らぬまま、日本は滅びようとしている。

http://www.kushima.org/is/?p=21576