詩の民主花
第弐号 だいだらぼっち
2015年7月5日発酵
詩
ミシマショウジ 《民主花のソネット》《いわくらに寄せて》
中川雄介《白むまで》
山野太郎《ひとつの詩を創る断想の過程#2》
UMU《SONG OF CIRCLE》
ヘイデン カルース《小川と岩について》
カルロス・ドゥルモンド・ジ・アンドラージ《道のまん中に》
写真
広本雄次
山野太郎 yamsai
表紙
Wa_no
編集
川邊 雄
発酵
黒パン文庫
印刷
JAM
ひとつの詩を創る断想の過程 #2
刈った草は蛍に成るらしい
落下する蛍
次々と
落下する蛍
蛍の衝動
花 にも衝動はあるのか
あの霧から少し
時 を経て
白い 花がそこらに
咲く 花に衝動は在ったのか
まだ霧は
はれない
人 の衝動も脆いもので
草 なら刈れるが
花 が其処にある
と 躊躇うのだ
衝動 を
行動 できるとは
なんと
自由なのだろうか
人は媒介に過ぎない
としたら
なぜ行動する
自由を得たのか
経たのか
ただ
花粉 を
はこぶだけの
日常 を
虫 を捕らえる蜘蛛
蜘蛛 も朽ちて土と成る
虫虫 も朽ちて土と成る
草草 も朽ちて土と成る
私も 狂うて土に成る
時節柄
蛇神様が顔を出す故
草を刈る
ハメ に噛まれて
息 をするのをやめ
土 に戻るのは
本望
草 も息絶え土に戻る
虫 も息絶え土に戻る
私 も息絶え土に戻る
私 たちは土でできている
私 たちは草でできている
私 たちは虫でできている
私 たちは私 たちでできている
農耕 という
原始の環境破壊を
実感せざるを
得ない
草 を刈る日々
せめてもの、で
耕さないでいる
せめてもの、で
手で刈っている
抵抗
抵抗する文化
自分ではない
誰かの破壊 により
成り立つ生活
実感しているか?
戦争の始まらない 6月
私たち 現代百姓は
麦 を刈る
穂 を千切るオト
と 雨のオト
音 のする方向をたどっても
時 は過ぎて
今 はもう何もない
雨 はいつから汚染された?
岩 はいつから其処に在った?
岩 の頂点に枯れる樹
風 に吹かれて
雨 に削られて
土 に成った世界へ
鳥 が種を落とした
自分ではない
誰かの破壊 により
成り立つ生活
実感しているか?
投じた泥団子から発芽した稲が群生する
毎夜 子供たちを連れて
川 に出掛ける
蛍 が今年も増えた
善い 知らせ
地球は滅びない
という 予言
汚染された雨 が降り続き
また夏がくる
私 たちでできた私 たちは
光 になり
落下 する
季節 が流れてゆく
水 が流れている
音 を聞いている
花崗岩を削りながら
落下してゆく
水 は
生命 である
途方なく長い時間
絶え間なく
一時も 止まらず
あらゆる存在に
速度をあわせる
意識ではなく
実在する 水
山 だと思っていたものは岩だった
岩 だと思っていたものは土だった
土 だと思っていたものは風だった
風 だと思っていたものは時だった
焚き火は小さく
これから
待ち望んだ雨が降って
水 をあびる
生命 ひとしれず
ヴァイオリン のオト
ギタァ のオト
ビワ のオト
だれかの ウタゴエ
音 のする方向をたどっても
時 は過ぎて
今 はもう誰もいない
未来 には誰もいない
という 予言
証言
私たち がいまここに
生きていたという
アカシヲ 遺そう
額紫陽花が咲き
そして立ち枯れる
私たちは
花 で記憶する
そこに遺る
検索されない言語 は
笑い声 らしい
せめてもの、で
わらいごえを
のこそう