春の息ぶき

蓋をあける
少し発酵した音がして
とても小さな飛沫が
ユラりと跳ねる
ペパーの香りが鼻をさして
頭の右後ろ辺りから
それは花と似ているかという声が聞こえる
どうせまたいつものサックだと
変形した袋を閉じた
またもやの逃亡
あの頃と同じ逃亡
颯爽にかつ身体をゆらし楽勝ぶって揺れるわけ
僕らはいつも逃亡していた
高い橋は息が切れて困る
電車を降りると霧に包まれて山の匂いがした
すぐに慣れた
滝はとても近い
得体の知れない宗教団体の痕跡までも愛おしく
人間の匂いがするものを探した
枯れた松葉を握り歩く
少年だったころの手
穏やかな陽がさしてきて
弦が震えた
もう息が続かない
「眠ってまた朝の光をあびて。」