20170327

風なしでは高く飛べぬ鳥

シャッシャッと米を洗い 
ギュッギュッと糠床を廻して 
トントンと野菜を刻んで 
コトコトと煮込んで味噌を入れる
暮らす
火を焚く
その日暮らし
米を炊いて 
茶を沸かす 
珈琲を淹れる 
昨晩炊いた大根を温め直す 
部屋が温もる
雨戸を開けて 
日が昇り始める
枇杷の木 
柿の木 
茱萸の木 
蜜柑の木 
猿梨の木 
光差し込み輝く
尉鶲が鳴き始める
雀が囀る
新しい糠と塩と野菜 
浅い糠漬けを糠ごと食べる
国家国家と鳴く鳥はもう渡ったか
叛逆の朝飯を食べ 
山を登り
果樹の苗を植える 
やがて樹は生長し 
子が子を産む頃 
豊かな実をつける 
3世代に渡る
革命の狼煙
焚火の煙に巻かれて 
国家国家と鳴く鳥が 
旋回する 
山桜が蕾み 
山塔が咲く
ramaの歌声は 
朽ちた身体と共に 
土に還る
火 
煙 
土 
繰り返す穏やかな暮らし
義務を棄て 
焼いてしまえ 
即ち 
自由だ
灰になった義務は 
暖かくなり始めた 
表土から 
無数の野花を咲かせる
名前の知らない花花 
本能のままに咲き 
種や根を遺し 
あるいは風に運ばれ 
虫に助けられ 
繁栄を夢見る 
もしくは 
このままであることを 
願う
風なしでは 
高く飛べぬ鳥よ




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