20260227

私たちは、争わないということを、特別な思想や主張として掲げるのではなく、日々の営みの中で静かに選び取りたいと考えています。

自然の中に身を置いていると、強さとは何かという感覚が少しずつ変わっていきます。強さとは、他を押さえつけることでも、競い勝つことでもなく、多様な存在が共に在り続けられる関係を保つ力なのではないかと感じるようになります。土壌の中では無数の微生物が互いに影響し合い、森では異なる樹種が光や水を分かち合いながら長い時間を生きています。そこには単純な優劣では説明できない、絶え間ない調整と共存の働きがあります。

自然は決して静止した調和の世界ではありません。変化も競合も存在します。しかし、それらは破壊や排除によって解決されるのではなく、関係の再編によって次の均衡へと移行していきます。その姿を見続けるうちに、人の社会だけが対立や分断を前提とし続ける必要はないのではないかという思いが生まれてきました。

異なる立場や価値観が存在することは避けられません。それでもなお、互いを消し去るのではなく、共に在ろうとする試みを重ねること。その営みの中にこそ、持続可能な関係のかたちがあるのではないかと感じています。

この場所で行われているのは、大きな理想を語ることでも、正しさを示すことでもありません。畑に触れ、季節の移ろいを受け取り、土地の変化に耳を澄ませながら、人と自然、人と人との関係を少しずつ整えていくことです。目に見える成果よりも、関係が壊れず続いていくことを大切にしています。

農の営みは、支配ではなく参与に近いものです。人が自然を管理するのではなく、自然の循環の中に自らを位置づけ直していく過程でもあります。その過程に身を置くとき、暴力や対立に依らない在り方は理念ではなく、具体的な実践として立ち現れてきます。急激な変化ではなく、小さな調整を繰り返しながら関係を保ち続けること。それ自体が、静かな意思の表れとなります。

争わないという選択は、何かに反対することよりも、どのように生きるかを問い続ける姿勢に近いものです。排除せず、急がず、優劣を固定せず、それぞれが存在できる余白を残すこと。完全な一致を求めるのではなく、不完全なまま共に在ることを許すこと。その積み重ねが、対立へ向かわない社会の基盤になるのではないかと考えています。

ここは、声高な宣言を行う場所ではありません。むしろ、静かに関わり、必要以上に主張せず、それぞれの距離を尊重しながら関係を育てていく場です。訪れる人も、関わる人も、同じ考えを共有する必要はありません。ただ、この場所に流れる時間の中で、争いに依らない関係の可能性に触れてもらえれば十分だと考えています。

日々の営みは小さく、変化もゆっくりとしたものです。それでも、土地を手入れし、季節を迎え入れ、共に過ごす時間を重ねることは、世界のあり方に対するひとつの応答であると感じています。遠くの出来事に直接関わることができなくても、自らの足元で選び取る生き方によって示せるものがあると信じています。

この場所は、対立を超えて共に生きる可能性を探り続ける、小さな実践の場です。明確な答えを持つわけではありません。ただ、日々の営みの中で、争いに向かわない在り方を選び続けること。その積み重ねが、未来へと静かにつながっていくことを願っています。

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